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スティーブ・ジョブスのスピーチから学ぶ、英語スピーチのセブンルール

 

Steve Jobs’ 2005 Stanford Commencement Addressをご存知でしょうか。Appleの創業者であるスティーブ・ジョブスの、スタンフォード大学の卒業生に向けたスピーチです。とても有名なスピーチなので、見たことがある方も多いと思います。私はこのスピーチがとても好きで、1ヶ月に1回くらいは見返しています。今回は、この有名なスピーチから、日々の会話から公式なスピーチまで、英語スピーチのゴールデンルールを学びたいと思います。

 

1. 最初に何の話をするのか伝える

Today I want to tell you three stories from my life. That’s it. No big deal. Just three stories. 

今日何の話をするのかをわかってもらうために、簡単に今日の話の内容を言います。これを先に言っておくことで、そのあとの話が記憶に残りやすくなる効果があります*。スティーブ・ジョブスのスピーチでは、three stories from my lifeと言っています。話の内容と今日の話のポイントがいくつあるのか、両方簡潔に言っていて、わかりやすいイントロです。とはいえ、これは人生明らかにいろいろありすぎるスティーブ・ジョブスだからこその、この一言で興味をひけるイントロで、私にはまねできない…。

*この効果の出典を探しましたが見つけられませんでした


2. 結論&サマリーファースト

The first story is about connecting the dots.

My second story is about love and loss.

My third story is about death.

パラグラフの最初にも、そのパラグラフのイントロがあり、パラグラフの内容を簡単にまとめて言っています。これもひとつ前のルールと同じで、これから何の話をするのか、オーディエンスに先に知ってもらうことが目的です。

 

このスピーチでは、サマリーは全て同じフォーマットになっていて、そこから違うパラグラフが始まることがわかりやすくなっています。表現はかなりキャッチーですが、2つめはlove & loss、3つめはdeath、と次々にインパクトのある話になっていき、引き込まれる構成です。


3. あなたが誰なのかを話す

It started before I was born. My biological mother was a young, unwed college graduate student, and she decided to put me up for adoption.

自分が何者で、どこから来たのか、何をしているのか、日本だとあまり突っ込んで話すことはないように思いますが、海外の人には説明が必要な機会が多いです。日本人にとっては当たり前のことも、知られていなかったりします。東京以外の都市の名前はほぼ知られていないので、たとえば京都出身であれば、Kyoto is located in western part of Japan. The city was old capital for 1000 years… のように、背景やコンテクストを説明します。
 

スティーブ・ジョブスのスピーチでは、生まれる前のストーリーから始まり、養子になった経緯まで、突っ込んだ内容に触れています。自分自身のアイデンティティと大学とのつながりを生まれる前からの宿命と位置付け、その宿命を自分の意思で破る、という、とても印象的なストーリーです。


4. 感情を話す

I didn’t have a dorm room, so I slept on the floor in friends’ rooms, I returned Coke bottles for the 5¢ deposits to buy food with, and I would walk the 7 miles across town every Sunday night to get one good meal a week at the Hare Krishna temple. I loved it. 

自分がそのときどのように感じたのか、感情や気持ちを話します。とくに、困惑や嬉しかったことなど、強い感情を感じた場面でそれを言います。この表現を入れるとよいということは、最近、英語で話すムービーを撮る機会があり、そのスピーチの練習をしていたときに、アメリカに長くいた人に指摘されました。たしかにスティーブ・ジョブスも言ってる…。最後のI loved it.から、本当に毎週日曜日の夜のディナーを楽しみにしていたことが伝わります。
どのタイミングでこの表現があるとよいのかは、指摘した人も説明できないそうです。もし、スピーチを習ったことがあり、どういうタイミングで、なぜこの表現を入れるのがよいのか説明できる方、教えてください。


5. 具体例を細かく話す

I was sedated, but my wife, who was there, told me that when they viewed the cells under a microscope the doctors started crying because it turned out to be a very rare form of pancreatic cancer that is curable with surgery.

自分がしたことを時系列で話し、決定的な瞬間は、その1分間に何が起きたのか、誰が何を言ったのか、という粒度でクローズアップします。

この、瞬間にフォーカスする、という手法は書く文章でもよく使われます。必ずしも事実通りではなくてもよいようです。ある文章を書くとき、その瞬間に何が起きたかまではわからないんだけど、どうしたらいい?という相談をしたら、事実を大きく曲げない範囲で創作してもいいと思う。とアドバイスされたことがあります。


このスピーチの中で印象的なのは、がんの検査を行い、治療不可能だと思われていたがんが、治療できるとわかった瞬間を描いた上の一文です。死に直面していたスティーブ・ジョブスの運命が転換する一瞬を切り取っています。


6. あなたにしか話せない話をする

This was the closest I’ve been to facing death, and I hope it’s the closest I get for a few more decades. Having lived through it, I can now say this to you with a bit more certainty than when death was a useful but purely intellectual concept: No one wants to die.

その人にしか話せない話をすることに価値があります。自分のバックグラウンド、自分だけがした経験、そこからの学び、など、誰にも話せない話を見つけ出します。自分にとっては当たり前だと思うことが、多様な人の中に入ると、他の人にとっては当たり前ではなくなります。自分にとって当たり前のことが、当たり前ではなく、言葉にすることに意味があると気づくことが大事なように思います。


また、このスピーチは、ディープシェアリングといわれる、普段自分が絶対に話さないことを、大切な人に共有することに近い内容を含んでいると思います。これは心理的安全性が確保されていて、心理的距離が近くないとできないことで、スティーブ・ジョブスとの心の距離が近くなったような気持ちになる効果があるように思います。

 

7. 結論&サマリーエンド

Stay Hungry. Stay Foolish.

全体を通してもっとも言いたいことを最後に言います。
この言葉は1970年代に発行されたThe Whole Earth Catalogからの抜粋で、とても印象的な言葉です。

 

このように見ていくと、伝わる英語を話すためには、表現も大切ですが、構成も大事な要素だと感じます。ノンネイティブは洗練された表現ではなかなか勝てないので、構成の部分で通じるように工夫したいところです。

 

元の動画とテキストはこちらからどうぞ。

news.stanford.edu